具体的事例を調べることにより、それらに共通する一般的則に気付くということがあります。
たとえば、2^2=4 を3で割った余りは1、4^2=16 を3で割った余りは1、5^2=25 を3で割った余りは1、7^2=49 を3で割った余りは1、、、、と調べた結果、3の倍数でない整数の2乗を3で割った余りは1なのではないかと考えたとしましょう。
この推測は正しく、一般に p を素数、n を p の倍数でない整数とするとき、n^(p-1) をpで割った余りは1になります。フェルマーの小定理です。
逆に、フェルマーの小定理を具体的事例に適用して、5^6 を7で割った余りは1になります。5^6 を実際に計算して、それを7で割ってみなくても余りは1だと分かるのです。
さて、具体的事例に潜む一般法則を見出すことと、一般法則を具体的事例に適用するのとどちらが難しいでしょうか。
上にあげたフェルマーの小定理については、一般法則を見つけることの方がずっと難しいように見えます。たとえ整数の累乗を別の整数で割ったときの余りを調べている人がいたとしても、そう簡単にフェルマーの小定理に気付くとは思われないからです。
ところが、一般法則を具体的事例に適用することの方が難しい場合もあるのです。
例を見てみましょう。
a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+a)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)
という因数分解の公式があり、これを理解し、覚えていたとしましょう。
しかし、x^3+y^3+3xy-1 を因数分解するときに、この公式を使えばよいことに気付くのが難しいのです。つまり、x^3+y^3+3xy-1=x^3+y^3+(-1)^3-3xy(-1) ですから、公式の左辺と同じ形になっているのに、それに気付かないということです。
ちょうど、昆虫が葉っぱや木の枝に擬態しているようなもので、自らを葉っぱや木の枝に似せることで昆虫としての特徴が見えにくくなっているのと同じ現象です。
数学では、たくさんの事例から、それらに共通する一般法則を見出そうと帰納的な考え方と、一つの法則を具体事例に適用する演繹的な考え方の2つを用いて思考する場面が多いのですが、入試問題を解くという意味では、演繹的思考がより重要になってきます。
すなわち、習い覚えた知識と技術をどのように組合せ、どのように使うのかを考えることにより問題を解くことが多いということです。もちろん、見たことがない設定が与えられていて、いろいろと調べる中で新しい発見をすることを要求する問題もありますが、主流は演繹力を問う問題になっています。
そのために、使う道具をそろえ、使う練習をします。
問題文の表現や設定により、どの技術を使うべきかが見えにくくなっていることもあるので、状況の本質を鋭く見抜いて、適切に対応するためにはトレーニングが必要になり、それが演習だということです。
知識不足は論外ですが、知識と技術が身についてきたら、演習をしましょう。
夏休みが飛躍のためのチャンスです!
