このところ、数学の話題を増やしていますが、当ブログでは数式を自在に表すことができないので、少し苦労しています。前回や前々回では数列の添え字が打てなかったり、シグマ記号の上付き、下付きが書けませんでした。今回もベクトル記号が打てないので、少し不自由な表現になっています。
なお、a^2 は a の2乗を表しています。指数も打つことができないのです。
ん? 指数ぐらいは打てるかもしれませんが、方法が分かりません。
さて、前回「覚えているだけではダメだ」のところで、点と直線の距離の公式は、覚えているだけで証明することができない諸君が多いという話を書きました。
点と直線の距離の公式は垂線のベクトルの大きさだったわけですが、ベクトルの分野には深く理解すべきなのに、理解が浅くなりやすい部分がいくつか含まれます。
たとえば内積です。
2つのベクトルの内積は(大きさ)×(大きさ)×(なす角の余弦)で定義されていますが、これは余弦定理から来ています。余弦定理:a^2=b^2+c^2-2bc・cosA の bc・cosA の部分はベクトルAB, ACの(大きさ)×(大きさ)×(なす角の余弦)になっており、これを内積と呼んでいるのです。
余弦定理を変形すると bc・cosA =(b^2+c^2-a^2)/2 であり、これが内積の形であると理解しましょう。
すると、成分表示されたベクトルの内積が (a, b)・(c, d)=ac+bd となる理由も分かります。
上で「内積の形」について触れましたが、これに当てはめると
(a, b)・(c, d)={a^2+b^2+c^2+d^2-(a-c)^2-(b-d)^2}/2=ac+bd
ということですが、どうしてこうなるのかと問われて、うっと詰まる生徒が多いのです。使えるだけで、なぜかということについては理解していない公式の典型です。
それから、内積は(大きさ)×(大きさ)×(なす角の余弦)という3つの実数の積の形で定義されていますが、これを(大きさ)×{(大きさ)×(なす角の余弦)}のように2つの実数の積だと見る見方も重要です。
例として、C を中心とする半径 r の円上の点 T における接線を考えてみましょう。
接線上に動点 P をとり、ベクトル CT, CP の内積を考えると ( CT の大きさ){( CP の大きさ)×コサイン} となりますが、CT の大きさは r であり、( CP の大きさ)×コサイン も CP の CT への正射影の大きさ、すなわち rです。結局、ベクトル CT, CP の内積は r^2 となり、C:(a, b)、T:(X, Y)、P:(x, y) とすると、内積の式は (X-a, Y-b)・(x-a, y-b)=r^2 すなわち (X-a)(x-a)+(Y-b)(y-b)=r^2 となり、これが接線の方程式です。
特になす角が鋭角のとき(大きさ)×{(大きさ)×(なす角の余弦)}とは (一方の他方への正射影の大きさ)×(他方の大きさ) を意味し、この理解も重要です。
ちなみに、この接線の方程式は「図形と方程式」の中に出てくる内容ですが、ベクトルを抜きにして説明するのが難しいです。
そもそも直線の方程式の一般型は内積から来た式なので、説明できるはずがないということです。
このように、ベクトルを学ぶ前に図形と方程式を学ぶと説明できない部分が多く、そういう内容が出てくるたびに「とりあえず覚えておくように」といったごまかしの授業になってしまいます。
「ベクトル」を学んでから「図形と方程式」を学ぶという順序に高校課程を変更すべきです。
ましてや、「ベクトル」を数Cに入れるなんて、ナンセンスの極みです。無理矢理に統計を入れたので、「分量調節のためにベクトルを数Cにまわしておくか」といった思い付き程度の発想だったと思われます。こういう無意味なことを繰り返すのはやめてほしいです。
高校課程について話し出すと、つい熱くなってしまいますが、「高校課程の改訂について」のところでも書いたので、今回はこの程度にしておこうと思います。
話を戻して、内積を(一方の他方への正射影の大きさ)×(他方の大きさ) と見る例にも触れておきましょう。
C を中心とする半径 r の円外の点 A から2接線を引き、接点を Q, R とします。Q, R を通る直線をこの円の A を極とする極線と呼びますが、QR と CA の交点を M として、極線上に動点 P を取り、ベクトル CA, CP の内積を考えると、CP の CA への正射影は CM になるので、内積の値は (CA の大きさ)×(CM の大きさ)になります。
さらに、⊿CQM と⊿CAQ の相似関係により r:(CM の大きさ)=(CA の大きさ):r ですから、(CA の大きさ)×(CM の大きさ)=r^2 となるので、結局、ベクトル CA, CP の内積の値は r^2 です。
C:(a, b)、A:(X, Y)、P:(x, y) として (X-a, Y-b)・(x-a, y-b)=r^2 すなわち (X-a)(x-a)+(Y-b)(y-b)=r^2 が極線の方程式です。
A:(X, Y) が円上の点であれば、極線の方程式がそのまま接線の方程式になるのも興味深いところです。
ついでながら、A と M はこの円に関して反転の関係になっていることにも注意しておきましょう。
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