昔、Z会京大マスターコースの京大クラスで、15人中13人が京大に受かったということがありました。優秀なクラスでしたし、みんな意欲的で、授業をするのがとても楽しかったです。
ところが、そのクラスで「点と直線の距離の公式を証明せよ」という課題に、しっかり議論できていたのがたったの1人だけだったということがありました。
一つには教育課程の問題があります。
点と直線の距離の公式は垂線のベクトルの大きさであり、これを初めとして図形と方程式の理論の多くはベクトルを基礎として作られています。つまり、ベクトルを学んでから図形と方程式を学ぶのが自然な流れなのに、学校ではこの順序を逆にしているから問題が生じるのです。
特に大きな問題は、この点と直線の距離の公式をベクトル抜きに説明しようとすると面倒になるという点ですが、そのほかにも直線の方程式の一般型を関数型に直さないとイメージがわかないだとか、直径型の円の方程式が理解できないなどといった問題も起こっています。
勢い、京大に受かるような高3生ですら、根拠不明のまま公式を覚えてやり過ごすというようなことが起こるのです。
しかし、それでは楽しくないし、応用範囲も狭くなってしまいます。
点と直線の距離の公式のほかにも、多くの諸君が知っているだけで証明はできないという例は数多くあります。
たとえば、シグマの公式です。
シグマの公式はすべて Σ{a(k+1)-a(k)}=a(n+1)-a(1) を用いて作ります。
Σk^2 であれば (k+1)^3-k^3=3k^2+3k+1 を考えます。この両辺のシグマを考えるときΣ{(k+1)^3-k^3} は計算でき、Σ(3k+1) も計算できるので
Σk^2=(1/3)・Σ{(k+1)^3-k^3-(3k+1)}
を計算すればよいのです。少し工夫して、(k+1)^3-k^3 の代わりに (k+1)^3-(k-1)^3=6k^2+2 を考えるとさらに計算が楽になります。
Σk^2=(1/6)・Σ{(k+1)^3-(k-1)^3-2}
こういうことを理解していれば、Σk^4 の公式を作ることが要求されても、すぐに対応できるでしょう。しかし、結果を覚えているだけの諸君には絶対にできません。
標準問題では、「知っていますか?」あるいは「使えますか?」という問い掛けしかないので、知識の背景があってもなくても、それが点数の差になることはありません。しかし、京大・東大の問題ではどれだけ深く理解しているかが問われるので、知識の背景があるかないかが決定的な差になるのです。
どんな公式でも、証明できるという前提で使うようにしましょう。
それが、京大や東大の問題が解けるようになるための基礎になるのです。
